歴史を振り返ると、人間が創り出した最も高度な機械との対比によって脳に対する我々の理解が深まってきた側面がある。現在のコンピュータと脳を比べてみると、アルゴリズムを遂行するという観点ではよく似ている面もある。しかしながら、新しいアルゴリズムを自ら創り出すという観点からみるとコンピュータと脳とでは大きく異なっている。どのようなアルゴリズムを遂行しているのか、また、どのようにして新しいアルゴリズムを創り出しているのか、という2つの観点から脳を理解することを目指している。
目の前のコップを手でつかむ、コンピュータ画面上のカーソルをマウスで操作する、といった動作を、我々は随意に遂行することができる。このような動作を遂行する機構は、身体各部位および外部環境との相互作用を通じて脳が獲得したものである。脳のもつすぐれた創発能力を工学的に応用するためには脳を理解することが必須であるとの観点から、脳が獲得した機構あるいは獲得過程を神経細胞レベルで理解することを目指して研究を行ってきている。現在、視覚情報を手掛かりにした手の到達運動の神経機構および運動学習の神経機構を研究中である。 |